ハンドパンとは?
みなさんハンドパンという楽器をご存知ですか?
以前よりも少しづつ知名度が上がってきたので、ネットやSNSなどで見る機会も増えてきました。
美しい音色、UFOみたいな形。しかし、それ以上のことはあまり知られていないのも事実。
中はどうなっているの?どこの国発祥?
ここではハンドパンの秘密について探っていきましょう!
ハンドパンの歴史
この楽器は一見すると古そうに見えるけれど、その誕生は実は2001年のこと。21世紀最初の発明品とも言われている。
いきなりこの形ができたわけではなく、スティールパンという楽器が原型となっている。
スティールパンとは、中南米カリブ海の小さな島国トリニダード・ドバコ共和国で発明されたもの。
元々はアフリカから連れてこられた黒人たちが生み出したもので、植民地時代の圧政の中、黒人たちは反乱ができないように道具の使用が大きく制限されていた。その中で生活の中にあったドラム缶を叩いて音楽を作ったのが始まりとされる。
スティールパンは、ドラム缶の底をくり抜きそこにチューニングを施し音程を作り上げる。
それをスティックを使って演奏する。とても陽気な音色で、カリブ海の太陽と人々のエネルギーを彷彿させる!
この楽器は日本でも有名で知っている人も多いのではないかと思う。いくつかの大きな団体も存在する。
スイスPANArt社の発明
時は1999年、スイスのスティールパン工房であったPANArt社に一件の依頼が入る。
ある著名なガダム奏者の方からで、「ガダムとスティールパンを融合させたような楽器を作ってほほしい。音階があり、手で叩くような…」
ガタムとはインドの楽器で壺の形をしている。これを手で叩きパーカッションのようにして音を出す。
新しい楽器の生まれるアイデアはまさにそこから始まったのだった。
それから2年後の2001年、出来上がったのがこの楽器ハングだったのでした。
・一口メモ
ハングとハンドパンの違いについて。
ハングはPANArt社の標章登録製品。他のメーカーが作るものは各自様々な呼び方で呼ばれました。そして徐々にこのような楽器を総称してハンドパンと呼ばれるようになっていったのです。
なのでハングもハンドパンの一つと言えます。
ハンドパンの構造
ハンドパンのその独特の形状は2枚の丸まった金属を張り合わすところにある。
上面の真ん中は出っ張っていてそこはディングと呼ばれる。その周りは窪んでいて、トーンフィールドと呼ばれる。
現在出回っているハンドパンは通常タイプが9音で1つのディングと8つのトーンフィールドだ。
裏面には中央に開口部がある。中は空洞だ。
音は表面全体から鳴り響いており、マイクをかざす場合は、中の空洞よりも、表面に置いた方が良い。
ハンドパン製作の仕方
まず鉄に窒化熱処理を加える、そうすると鉄がさらに硬くなりチューニングが可能になる。(これを発見したのがPANArt社だった)
現在のハンドパンの主流の素材はステンレスであり、初期のハンドパンやハングは鉄であったために手入れを怠るとすぐに錆が発生した。
現在はアンバースティールなどの素材もあり、またそれらの厚みも選べ、スケールや音数をどれだけ入れたいかによって使い分けられている。
そしてハンドパンの形状にするために丸みをつける工程も、以前まではプレス機で使っていたが、現在は水の圧力で丸みをつける技術が開発され、そうするとまた音の質感が変わり、新しい技術として普及している。
またここまでの工程をし、ハンドパンのシェルだけを売っている会社もある。現在ハンドパンが安価で多く普及しているのは、造るメーカー増えたこと、造りやすくなったことが挙げられると思う。
*現在世界には500社近くハンドパンを造るメーカーがあるようだ。日本でも新しく4、5人造っている方がいる。
さて、ここまで来たら後はチューニングを施す作業だ。
しかし、こここそがハンドパンの命でもありものすごく難しい技術なのだ。
それは、一枚の鉄の板に何個もの音をチューニングしなくてはならず、それぞれの音が干渉しないようにしなければならない。また音楽理論や数学的な知識も必要となってくる。
ハンドパンのあのふくよかな倍音の秘密は、一つ一つのトーンフィールドに隠れていて、一つの場所に3つの音がチューニングされているのだ。基音と1オクターブ上の音と、プラス5度の音。
職人さんの感性と情熱によって、それぞれのハンドパンの個性が生まれてくる。
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